The RNA Society of Japan

学会を10倍楽しもう

Written by 中川 真一 (日本RNA学会会長)

非日常のハレの舞台でもある学会では、とかく色々なハプニングが起きがちです。身の回りで起きた出来ごとをネタに三日三晩語り尽くせる、という方々もたくさんいるのではないでしょうか。初めての発表で緊張し、一旦会場の外にでて練習していたら前のスピーカーにキャンセルが出てスケジュールが前倒しになり、戻ってみたらなぜか自分のスライドが映っていて会場にいない本人の代わりに「えーっとこれは確か、、、」とボスが発表していたとか、宿代ケチって公園で野宿していたらカバンごとポスターを盗まれて、仕方がないから模造紙を買ってきてサインペン片手に発表したとか、音信不通だった元カノがなぜか同じミーティングに来ていて、思いがけない恋のいたずらに歩きたいのよ高輪を実践してしまったとか、、、そんなウソのような本当の話を目の当たりにできるのも、学会の醍醐味です。

もちろん学会はサイエンスをする場であって、悲喜こもごもの人間模様はあくまでもお通し、付け出し、前菜です。学会での出会いをきっかけに大きく研究が発展した例をあげれば枚挙にいとまがないのは当然のこと。なんかめんどくさい質問する人だなあと思いきやそのあと話をしてみたら意気投合して論文になったとか、うちにあるあれ、試してみます?みたいな感じで休憩時間のひょっとっした雑談が大当たりだったりとか、学会でのあの偶然の出会いがなければその後大きく世の中を動かすことになるあの論文にはならなかった、という話は、そこらかしこでよく耳にすることです。自分がやっている研究は自分が一番よく知っている、と思いがちですが、岡目百目とはよく言ったもので、たまに学会に来てpeerとディスカションしたりちょっと分野の違う人と話をすることで、これまでの景色がまるで違ったように見えてくることも幾度となく経験しました。あ、そうかも、そうだよ、そうに違いない!と風呂から飛び出したアルキメデスのように大興奮してラボに戻り、実際に試してみたらうーんやっぱり違ったか、なんて事の方が多いわけですが、いっときでも夢中になれる、そのこと自体が、研究を生業をしている我々にとって大きなrewardである気もします。

それにしても、研究者って、なんでこんなに研究の話をするのが好きなのでしょう。以前、神戸のポートアイランドに住んでいたことがあって、コミックライブというのでしょうか、アニメからそのまま抜け出てきた風のお兄さんやお姉さんが、普段は閑散とした広場を年に何回か埋め尽くすその光景は、なかなかの壮観でした。着飾った人々のキラキラした目を見てどこかで見たことのある風景だなと思ったら、まあ、場所がそのまんまということもあるのでしょうが、これ、学会の風景そのままではないか、と。PCRが増えない、ウエスタンのバンドがひん曲がってる、せっかくあたりの細胞取れたのに全部サンプルにしてしまった。学会に集う人々は、そういった研究室あるあるの、しょうもない苦労を味わった同志です。学生さんは初めての学会であれば何を話していいかわからないという人も多いかと思いますが、まずは今うまくいかない実験のことをネタにしてみてください。食いつく。食いつく。もう入れ食い状態になること間違いなしです。RNA学会に初めて出入りしたころ、なんで見ず知らずの僕にこんなに親切に色々教えてくれるんだろう、と不思議に思ったこともありました。それが日本のRNA研究コミュニティーで綿綿と引き継がれてきた素晴らしき伝統ということもあるのでしょうが、研究者はやっぱり本質的にオタクなんです。きっと。研究者はもっと広く一般に自分の研究のことをわかりやすく説明しなければならない、ということがよく言われ、それは実際そうなのだとは思うのですが、年に1回の学会ではややこしいことを全て忘れ、思いっきりマニアックな研究の話に没頭できる。それはまさに、砂漠の中のオアシスです。

ちなみに、多くの人にとって学会と年会は同義語だと思いますし、この巻頭言もそのような言葉遣いになっていますが、学会ではそれ以外の活動も行っています。年会ではぜひ総会に参加していただいて、皆さんでこの学会を作っていきましょう!

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